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2016.05.21

相続税の修正申告と更正の請求について

相続税の修正申告と更正の請求は、相続税の申告後に発生した後発的事由などにより行う事後の手続です。相続税の申告期限までに未分割のため民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合で申告した後に、相続財産の分割が行われ、その分割に基づき計算した税額と申告した税額とが異なるときは、実際に分割した財産の額に基づいて修正申告又は更正の請求をすることができます。
修正申告は、初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が多い場合にする申告です。
更正の請求は、初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が少ない場合に、分割のあったことを知った日の翌日から4か月以内にすることができる請求です。
上記の特例が適用できるのは、原則として申告期限から3年以内に分割があった場合となります。

1.修正申告と更正の請求

相続税は、所得税や贈与税などと異なり、課税財産の所有者である被相続人の死亡後に相続人等によって申告手続が行われることになるため、当然ですが課税財産の内容等を所有者自身に確認することは不可能です。
その結果、故意かどうかは別問題として申告漏れとなるケースが生ずる場合があります。こうした事態を回避するために、相続財産の調査にご協力いただくことが重要になりますが、実際問題として完全を期すことはなかなか容易ではありません。
仮に、相続税の申告後に行われる税務調査の結果、修正申告や更正処分があった場合の手続や加算税・延滞税の取扱いについても予め納税者の皆様に説明しています。

2.相続に特有の後発的事由と税務手続

相続税の申告後の後発的事由として、例えば、次のような他の税目にはない特有のものがあります。
① 相続税の申告後に未分割遺産が分割されたことによって、当初申告の課税価格又は税額に異動が生じたこと。
② 死後認知、推定相続人の廃除などにより相続人に異動が生じたこと。
③ 遺留分の減殺請求があったため、相続財産の返還又は価額弁償が行われたこと。
④ 遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があったこと。
①から④の事由が生じた場合の事後的な税務手続を説明していますが、納税者の皆様の御理解をいただくとともに、これらの事由が生じたときには直ちに連絡をされたい旨を伝えているところであります。これらの事由に基づく事後の修正申告等についての加算税や延滞税の取扱いについては、お問い合わせ下さい。

3.相続税の更正の請求手続

既に行った相続税の申告について、税額等が過大であった場合に減額更正を求める場合の手続です。
更正の請求手続の対象者は、既に行った申告について、税額等が過大であった者です。

(1)相続税の更正の請求期限

相続税の更正の請求書の提出期限は次の通りです。
①・平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する申告については、法定申告期限から5年以内です。
・後発的理由などにより更正の請求を行う場合には、それらの事実が生じた日の翌日から2か月又は4か月以内となります。
②・平成23年12月1日以前に法定申告期限が到来する申告については、法定申告期限から1年以内です。
・後発的理由などにより更正の請求を行う場合には、それらの事実が生じた日の翌日から2か月又は4か月以内となります。

(2)相続税の更正の請求手続方法

相続税の更正の請求書には、更正の請求の理由の基礎となる事実を証明する書類等の添付書類を必ず添付して提出先に提出してください。

4.相続税の申告後に行われる遺産分割のやり直しの可否

相続の法的意義や遺産分割の効果については既掲載のとおりですが、いったん有効に成立した遺産分割をやり直したいという意向が皆様から示される場合があります。
遺産の分割の効力については、民法第909条において、「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と規定しています。その理由はさまざまですが、民法909条が規定する遺産分割の遡及効からみれば、その遺産分割のやり直しは新たな所有権の移転であり共同相続人の全員の合意があったとしても、相続税の税務への問題は避けられないことになります。
当初の遺産分割について錯誤又は無効となる原因があれば、そもそも有効な遺産分割が成立していないことになり、改めて遺産分割を行うことになります。例えば、共同相続人の一部の者を除外して行った遺産分割などが考えられます。相続人が所在不明であるにもかかわらず、その者の財産管理人を選任しないで行った分割協議や非摘出子の存在を知らずに分割協議を行ったような場合には、当初の分割協議自体が無効であり改めて遺産分割を行う必要があります。このような場合には、そのことによって財産の移転等があっても贈与税等の課税問題は生じないことになります。
実務で問題になりやすいのは、遺産分割の不公平を解消するための再分割である。相続人Aの取得した土地の価額がその後に高騰し、相続人Bが取得した有価証券の価額が下落したという場合に、当事者間の利害を調整するために遺産分割をやり直すといったケースです。このような利益調整的な再分割を行った場合には、贈与税等の課税問題が生じることになります。また、再分割を行ったために相続財産が減少したとしても、更正の請求ができないことはいうまでもありませんので注意が必要です。
なお、相続財産の一部を除外又は脱漏して行った遺産分割は、その除外又は脱漏した財産が未分割であったというにすぎません。したがって、その財産のみの分割を行うことになるため、再分割という問題は生じません。ただし、その除外又は脱漏した財産の価額が当初の分割対象財産の価額に比して、きわめて多額に上るという場合には再分割をせざるを得ない場合があるとも考えられます。
また、相続財産に重大な瑕疵があることが事後に判明した場合には、共同相続人間の担保責任について、民法第911条において「各共同相続人は、他の相続人に対し、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う」と規定し、瑕疵のある財産を取得した相続人は、他の相続人に損害賠償を請求することで解決すべきであるとしています。したがって、このような場合であっても、原則として再分割を行う理由にはならないことになります。
いずれにしても遺産分割のやり直しは、通常の場合には不可能と考えるべきであり、仮にそのやり直しをすると、その時点で新たな課税問題が生じる場合が多いことに留意する必要があります。

5.相続税法・国税通則法の参考法令

相続税法第27条(相続税の申告)

相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第21条の9第3項の規定の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下子の条において同じ。)により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格(第19条又は第21条の14から第21条の18までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格(第19条又は第21条の14から第21条の18までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)に係る第15条から第19条まで、第19条の2から第20条の2まで及び第21条の14から第21条の18までの規定による相続税額があるときは、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内(その者が国税通則法第117条第2項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

相続税法第31条(修正申告の特則)

第27条若しくは第29条の規定による申告書又はこれらの申告書に係る期限後申告書を提出した者(相続税について決定を受けた者を含む。)は、次条第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じたため既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、修正申告書を提出することができる。
2 前項に規定する者は、第4条に規定する事由が生じたため既に確定した相続税類に不足を生じた場合には、当該事由が生じたことを知つた日の翌日から10月以内(その者が国税通則法第117条第2項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に修正申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
3 前項の規定は、同項に規定する修正申告書の提出期限前に第35条第2項第5号の規定による更正があつた場合には、適用しない。
4 第28条の規定による申告書又は当該申告書に係る期限後申告書を提出した者(贈与税について決定を受けた者を含む。)は、次条第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じたことにより相続又は遺贈による財産の取得をしないこととなつたため既に確定した贈与税額に不足を生じた場合には,修正申告書を提出することができる。

相続税法第32条(更正の請求の特則)

相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定を受けた後修正申告書の提出又は更正があった場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額)が過大となったときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求(国税通則法第23条第1項(更正の請求)の規定による更正の請求をいう。)をすることができる。
一 第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。
二 民法第787条(認知の訴え)又は第892条から第894条まで(推定相続人の廃除等)の規定による認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、同法第884条(相続回復請求権)に規定する相続の回復、同法第910条第2項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)の規定による相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
三 遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと。
四 遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があつたこと。
五 第42条第30項(第45条第2項において準用する場合を含む。)の規定により条件を付して物納の許可がされた場合(第48条第2項の規定により当該許可が取り消され、又は取り消されることとなる場合に限る。)において、当該条件に係る物納に充てた財産の性質その他の事情に関し政令で定めるものが生じたこと。
六 前各号に規定する事由に準ずるものとして政令で定める事由が生じたこと。
七 第4条に規定する事由が生じたこと。
八 第19条の2第2項ただし書の規定に該当したことにより、同項の分割が行われた時以後において同条第1項の規定を適用して計算した相続税額がその時前において同項の規定を適用して計算した相続税額と異なることとなつたこと(第1号に該当する場合を除く。)。
九 次に掲げる事由が生じたこと。
イ 所得税法第137条の2第13項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定により同条第1項の規定の適用を受ける同項に規定する国外転出をした者に係る同項に規定する納税猶予分の所得税額に係る納付の義務を承継したその者の相続人が当該納税猶予分の所得税額に相当する所得税を納付することとなつたこと。 ロ 所得税法第137条の3第15項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定により同条第7項に規定する適用贈与者等に係る同条第4項に規定する納税猶予分の所得税額に係る納付の義務を承継した当該適用贈与者等の相続人が当該納税猶予分の所得税額に相当する所得税を納付することとなつたこと。
ハ イ及びロに類する事由として政令で定める事由三 遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと。

国税通則法第23条(更正の請求)

納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年(第2号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、9年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第26条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があつた場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。
一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。
二 前号に規定する理由により、当該申告書に記載した純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に純損失等の金額の記載がなかつたとき。
三 第1号に規定する理由により、当該申告書に記載した還付金の額に相当する税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に還付金の額に相当する税額の記載がなかつたとき。
2 納税申告書を提出した者又は第25条(決定)の規定による決定(以下この項において「決定」という。)を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した者については、当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができる。
一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して2月以内
二 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算に当たつてその申告をし、又は決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があつたとき 当該更正又は決定があつた日の翌日から起算して2月以内
三 その他当該国税の法定申告期限後に生じた前2号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき 当該理由が生じた日の翌日から起算して2月以内
3 更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正前の課税標準等又は税額等、当該更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至つた事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない。
4 税務署長は、更正の請求があつた場合には、その請求に係る課税標準等又は税額等について調査し、更正をし、又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する。
5 更正の請求があつた場合においても、税務署長は、その請求に係る納付すべき国税(その滞納処分費を含む。以下この項において同じ。)の徴収を猶予しない。ただし、税務署長において相当の理由があると認めるときは、その国税の全部又は一部の徴収を猶予することができる。
6 輸入品に係る申告消費税等についての更正の請求は、第1項の規定にかかわらず、税関長に対し、するものとする。この場合においては、前3項の規定の適用については、これらの規定中「税務署長」とあるのは、「税関長」とする。
7 前2条の規定は、更正の請求について準用する。

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