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2016.05.13

相続税の申告における相続人の確認と法定相続分など相続分について

相続税の申告では民法の規定により相続人を確認します。その相続分について遺言のない相続では法定相続分、特別受益者の相続分、遺留分、寄与分など民法の規定をめぐって遺産分割の争いとなることも少なくありません。相続税の総額の基となる税額を算出するときに民法に定める法定相続分に従って取得したものとして法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額を求めますが、今回はまず最初に民法の規定から相続人の範囲や法定相続分など相続分について確認してみましょう。

1.相続人の範囲について

死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。 相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。相続を放棄した人とは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に相続の放棄の申述をした人のことをいいます。相続の放棄の申述をしないで、事実上、相続により財産を取得しなかった人はこれに該当しません。
また、内縁関係の人は、相続人に含まれませんので注意が必要です。

(1) 第1順位は、死亡した人の子供です。

その子供が既に死亡しているときは、その子供の子供や孫など直系卑属が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

(2)第2順位は、 死亡した人の父母や祖父母など直系尊属です。

父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。 第2順位の人は、第2順位の人がいないときに相続人となります。

(3)第3順位は、死亡した人の兄弟姉妹です。

その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないときに相続人となります。

2.相続人の法定相続分について

民法に定める法定相続分は以下の通りですが、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分とも言えます。法定相続分は相続税の総額の基となる税額を算出するときにも用いますが必ずしもこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありませんので注意が必要です。以下において子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。

(1)配偶者と子供が相続人である場合

配偶者1/2 子供1/2(2人以上のときは全員で1/2)

(2)配偶者と直系尊属が相続人である場合

配偶者2/3 直系尊属1/3(2人以上のときは全員で1/3)

(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

配偶者3/4 兄弟姉妹1/4(2人以上のときは全員で1/4)

3.相続人の確認と相続人の確定方法等について

(1)戸籍謄本の収集による相続人の確認について

① 相続税の申告実務では、被相続人と相続人の関係を明らかにして相続人を特定するために、被相続人と相続人の戸籍謄本(戸籍の全部事項証明書)を収集しています。
② 不動産の相続登記において、登記原因証明情報(相続証明書)を添付しなければならないので、相続人に漏れのないことを証するために被相続人の出生時から(不動産の登記実務においては被相続人の13歳ころからの場合もある様です。)死亡時までの連続した戸籍謄本を収集します。
③ 戸籍は、明治4年の戸籍法の制定により編成されたのが最初です。その後数次にわたって様式が改められて現在行の様式は、昭和22年に制定されたものです。平成6年に戸籍法の改正があり、戸籍を磁気ディスクで調製するという戸籍のコンピュータ化が行われています。 戸籍の様式が変更されると戸籍事項が旧戸籍から新戸籍に移記されますが、これを戸籍の改製といいます。新戸籍が編成された場合の旧戸籍を改製原戸籍といいます。そこで戸籍のコンピュータ化によって調整されると紙ベースによる戸籍は、改製原戸籍となります。
④ 戸籍の改製により新戸籍に記載される者は、その時点で籍を有する者だけであって既に除籍された者は記載されないので、相続人を確認する相続証明書の作成に当たって通常の場合は、改製原戸籍を含めた複数の戸籍が必要になります。
⑤ 戸籍のコンピュータ化によって各市区町村で発行される証明は、それぞれ以下の通りです。
イ.コンピュータ媒体による証明書類の場合
・戸籍の全部事項証明書・戸籍の個人事項証明書・戸籍の一部事項証明書・除かれた戸籍の全部事項証明書・除かれた戸籍の個人事項証明書・除かれた戸籍の一部事項証明書
ロ.紙媒体による証明書類の場合
・戸籍謄本・戸籍抄本・戸籍の記載事項証明書・除籍謄本・除籍抄本・除籍の記載事項証明書

(2)戸籍謄本の収集方法について

① 戸籍謄本(戸籍の全部事項証明書)等は、その人の本籍地の市区町村役場に戸籍謄本等請求書を提出して交付を受けることができます。
ただし、戸籍には個人のプライバシーに関することが記載されているため、戸籍謄本等は原則として戸籍筆頭者のほかに、その人の配偶者や直系卑属及び直系尊属以外の人は請求することはできないことになっています。
② 委任により弁護士、司法書士、税理士等が相続や相続税の申告など職務上の必要に基づいて独自に戸籍謄本等の交付を請求することは可能です。この場合には、請求者の資格の確認のために一定の統一用紙によることとされています。私達、税理士の場合には相続税申告の税務代理にあたり「戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書」により交付請求を行っています。この職務上請求書は、所属税理士会が交付した交付番号付きの用紙のみが有効であり、これをコピーして使用することは禁止されていますので依頼される場合には確認して下さい。

(3)戸籍謄本等の見方と収集の範囲について

戸籍には、本籍及び氏名(戸籍筆頭者)の他に、「戸籍事項」として戸籍の編成事由、編成した年月日などの記載があり、「身分事項」として出生、婚姻、養子縁組、認知、死亡などの記載があります。以下の戸籍を収集すれば、相続の証明ができるとともに相続人を確定することになります。
① コンピュータ化された戸籍の全部事項証明書では、身分事項欄に死亡と記載され、例えば私が死亡した場合には、被相続人田中操が死亡日平成○○年○月○日死亡時分○時○○分に死亡して、戸籍に記載されている者欄に除籍と記載されることになります。この除籍を記載した戸籍には、戸籍事項欄の戸籍改製として平成○○年○月○日と戸籍改製日が記載されており、改製事由として「平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製」などと記載されています。そこで、この戸籍は、被相続人の戸籍編成時(平成○○年○月○日)から死亡時までの戸籍であることが確認できます。
② そこで戸籍謄本等の収集範囲は、平成○○年○月○日以前の戸籍(改製原戸籍)に遡っていく必要があります。したがって、被相続人の出生時までの改製原戸籍を遡って収集することになります。
③ 被相続人の相続人である子が婚姻をしていれば、同人の新たな戸籍が編成されるために除籍されているので、その子が生存していることを確認するため、同人の戸籍も収集する必要があります。

4.相続人の指定相続分について

再び相続分についてですが、被相続人は遺言によって共同相続人の全部又は一部の人について、その相続分を指定し又はその指定を第三者に委託することができます。相続分の指定がある場合には、法定相続分に優先することになります。
共同相続人の一部の人について相続分の指定があった場合の他の相続人の相続分は、民法第902条2項の規定により、指定相続分以外の部分を法定相続分で配分することになります。また、民法第902条1項但し書きの規定により、その相続分の指定に当たっては、遺留分の規定に反することはできないとされていますが、遺留分に反する指定をした遺言が直ちに無効になるわけではなく、遺留分を侵害された人は、他の相続人又は受遺者に対して減殺の請求をして相続財産を確保することとされています。

5.特別受益者たる相続人の相続分について

共同相続人間の実質的な公平を図るために、共同相続人のうちに被相続人から遺贈を受け又は生前贈与を受けている人を特別受益者として、相続分の算定において持戻し計算をする旨を民法は規定しています。
特別受益がある場合の持戻し計算は、未分割遺産がある場合の相続税の課税価格の計算にも採用されています。相続人間で遺産分割をめぐる紛争が生じた場合には、この特別受益の有無とその価額や算定時期が問題となり当事者にとっては重要な関心事となっています。明らかに特別受益に該当するものであっても被相続人が遺言等で特別受益を考慮せずに相続分を算定するという意思表示をしたときには、遺留分に反しない範囲内で有効なものとしています。

6.相続人の寄与分について

いわゆる寄与分制度として民法の規定により「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者」については、法定相続分・指定相続分・特別受益者の相続分とは別に相続財産を取得できることとしています。
そこで相続分に関して、この寄与相続分を主張する相続人がいる場合があり遺産分割協議が紛争になることも少なくありませんが、寄与分は通常の寄与ではなく特別の寄与があった場合にのみ認められることを踏まえて遺産分割協議をされることを拙に願っています。

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