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2016.04.24

消費税のインボイス制度と区分経理によらない方法

平成33年4月より「いわゆるインボイス制度として適格請求書等保存方式」が標準税率と軽減税率の複数税率制度の下で適正な課税を確保する観点から導入されます。
ただし、平成29年4月から4年間は、簡素な方法として「区分記載請求書等保存方式」がすぐには新たな税額の計算方法に移行できなかったり、適正な請求書を発行することができない、納税事務である区分経理に困難を伴う中小事業者の準備等のため導入されます。

1.区分記載請求書等保存方式(簡易な方法 経過措置)

平成29年4月から平成33年3月まで導入される区分記載請求書等保存方式は、現行の請求書等保存方式を維持しつつ区分経理に対応するものです。
(1) 現行制度の「請求書等保存方式」では、売り手が発行する請求書等に、①請求書発行者の氏名又は名称、②取引年月日、③取引の内容、④対価の額、⑤請求書受領者の氏名又は名称、を記載する必要があります。
(2) 区分記載請求書等保存方式では、この記載事項に①軽減税率の対象品目である旨、②税率ごとに区分して合計した対価の額(税込み)、が追加されます。ただし、現行制度と同様、売り手側には区分記載請求書の交付義務及び写しの保存義務はなく、不正交付に対する罰則もありません。
なお、ここでいう「請求書等」には、一定の記載事項を満たす領収書や納品書、小売事業者等が交付するレシートなど取引の事実を証する書類も含まれます。
(3) 一方、買い手側では、区分記載請求書の保存が仕入税額控除の要件となります。免税事業者も区分記載請求書を交付することができますので、免税事業者からの仕入れも仕入税額控除が可能です。請求書等への追加記載事項である①軽減税率の対象品目である旨、②税率ごとに区分して合計した対価の額(税込み)の記載がない場合には、買い手が事実に基づき追記することで仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
(4) また、支払対価が3万円未満の場合や自動販売機から購入する場合、入場券など証拠書類が回収される場合、中古品販売業者が消費者から仕入れる場合など、請求書の交付を受けることが困難な場合には、現行と同様に請求書等の保存は不要で、帳簿への記載により仕入税額控除ができます。せり売りや無条件委託販売・共同計算方式による媒介・取次業者が作成した請求書等の保存により仕入税額控除が可能となります。
(5)区分記載請求書等保存方式の納付税額の計算方法
区分記載請求書等保存方式の場合の納付税額の計算方法は、軽減税率と標準税率の適用税率ごとの取引総額に110分の10、108分の8を乗じて売上げ又は仕入れに係る消費税額を計算する、現行の「割り戻し計算」が維持されます。
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区分記載請求書等保存方式(出所)政府税制調査会資料

2.適格請求書等保存方式(インボイス制度)

平成33年4月以降導入される「いわゆるインボイス制度の適格請求書等保存方式」では、税額計算をこの適格請求書の記載どおりに行う仕組みとなります。
(1) そのため、売り手が交付する請求書等の記載事項は、区分記載請求書等保存方式での事項に、①登録番号、②税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率、③税率ごとに区分して合計した消費税額等(消費税及び地方消費税の合計額)、の3項目が追加されます(消法57の4)。
(2) 新たな記載事項のうち上記(1)①の登録番号は、課税事業者のみが適格請求書を発行できる「適格請求書発行事業者登録制度」が創設されますので、適格請求書を交付しようとする課税事業者は、納税地を所轄する税務署長に申請書を提出して登録を受ける必要があります。登録を受けた課税事業者のみが適格請求書を交付することができます。登録は平成31年4月1日から申請を受け付けます(消法9、57の2)。
(3) そして、平成33年4月1日より、適格請求書発行事業者の登録を受けた課税事業者(売り手)は、取引の相手方から求められた場合の適格請求書の交付及び写しの保存が義務付けられることとなります。ただし、不特定多数の者に対して販売を行う小売業、飲食業、タクシー業等については、適用税率もしくは適用税率ごとの消費税額等のどちらかの記載でよく、販売先の事業者の氏名等を省略できるなど、適格請求書の記載事項を簡易なものとする「適格簡易請求書」を交付することが認められます。
なお、偽りの適格請求書を発行した場合には罰則が適用されます(消法65)。
(4) 一方、買い手側は、適格請求書の保存が仕入税額控除の要件となります。ただし、区分記載請求書等保存方式では免税事業者からの仕入れも仕入税額控除が可能ですが、適格請求書等保存方式が導入されると、免税事業者は適格請求者を交付できないため免税事業者からの仕入れは仕入税額控除をすることはできません。
(5) 免税事業者からの仕入れについての経過措置
そこで経過措置として、免税事業者からの仕入れについて、平成33年4月から36年3月までは仕入税額相当額の80%、平成36年4月から39年3月までは同50%の控除が認められます(附則52、53)。
(6) 自動販売機からの購入や中古品販売業者の消費者からの仕入れなど適格請求書の交付を受けることが困難な場合には、適格請求書の保存は不要で帳簿への記載により仕入税額控除が可能です。なお、支払対価が3万円未満の課税仕入れについては、請求書等の保存を不要とする規定が廃止されますので適格請求書の保存が必要となります。
せり売り等による媒介・取次により販売される場合は、現行の取扱を存続し、媒介・取次業者が作成した請求書等の保存により仕入税額控除ができます。
(7) 適格請求書等保存方式の納付税額の計算方法
適格請求書等保存方式による場合の売上げ及び仕入れに係る税額計算は、消費税額を積み上げて計算する「積上げ計算」と、税込み価格を税率で割り戻して計算する現行の「割戻し計算」との選択制となります。 「積上げ計算」は発行した適格請求書に記載した税額を全て集計する方法、「割戻し計算」は適用税率ごとの取引総額に110分の10、108分の8を乗じて計算する方法です。どちらかの計算方法を選択できますが、売上税額を「積上げ計算」により計算する場合には、端数処理による益税を防止する観点から、仕入税額も「積上げ計算」により計算する事になります。
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適格請求書等保存方式(出所)政府税制調査会資料

3.帳簿・請求書等の記載事項にみるインボイスと仕入税額控除

軽減税率を平成29年4月から導入し、事業者を3区分して経理方式を区分したうえで、請求書等については区分記載請求書等保存方式から適格請求書等(インボイス)保存方式へと移行されていきます。インボイスについては、簡易インボイスを導入している国もありますが、帳簿・請求書等方式が採られてきました。帳簿への記載事項も請求書等への記載事項も、何れも記載事項の要件を満たしている必要があります。記載事項の一部が省略されている場合には、仕入税額控除が否認されることがありますので注意が必要です。

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